第十五話

あれから一週間、俺は直江のマンションに行ってない。学校ではそりゃ会うが、どうしても個人的に会う気になれなかった。
ちょくちょくかかってくる電話も、忙しいと言って切ってしまう。
そういえば、あいつは飯どうしてんだろう。彼女が作ってくれてんのかな。



「げ…日直かよ」

日直が回ってきたのに気づいたのは昼休みだ。しかもタイミングの悪いことにペアの奴は今日、学校を休んでいる。
日誌は担任の所で貰わなくちゃいけないんだ。

「俺も行く?」
「あーいや…大丈夫」

大変ありがたい申し出だが、それはなんだか女子のようで恥ずかしい。少し心配そうな譲を残し、俺は重い腰を上げた。




昼のガヤガヤとした職員室の中を、若干緊張して入る。

「今日はあなたが日直なんですね」

だが日誌を手渡した直江は、拍子抜けするくらいいつも通りだった。もう彼女についてハッキリ答えを聞いてしまおうか。

「…うん」
「あっそうだ」

高耶さん、と周りをはばかり直江は声を小さくする。

「桃は好き?」
「?好きだけど」
「よかった。昨日実家から桃が沢山届いたんです。今日一緒に食べませんか?」
「食べる!」

しまった。桃に釣られて思わず即答してしまった。俺のアホ。

直江は「では放課後」と言って嬉しそうに笑った。


「あ、おかえりー」
「おう」

カタンと椅子を引いて譲の後ろに座る。

「千秋は今ね、呼び出され中だよ」
「え?なんかしたのかアイツ」
「一年の女の子が来て、ちょっといいですか!って」
「うっぜぇ」

告白かよ!

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